登場人物
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季布  「得黄金百斤 不如得季布一諾」


 季布は、紀元前3世紀末の中国大陸におけるいわゆる楚漢戦争期において
 楚軍を代表する軍人として活躍した人物である。
 しかしながら、彼の楚軍在籍中の詳細な記録は殆ど残されていない。
 
 歴史書『史記』には
 
 「勇猛果敢な働きで楚軍の中で頭角を現し、
 自ら軍を率いては数度に渡り敵将の軍旗を蹂躙した」
 
 などと書かれており、このように彼が有能な将校であったことを伝える
 言葉は少なくないものの、実際にいつ頃からどのような経緯で楚に仕え、
 いずれの戦場に従軍したのかは、全く分かっていない。
 
 秦末期の彼について史実として伝わっていることといえば、
 楚人であるということと、任侠の徒として名高かったということ、
 そして項羽に仕え、軍を与えられて活躍したということぐらいである。


 「カンニング・スタンツ」の主人公としての季布を選んだのは、
 こういった謎の経歴がキャラクターとして動かしやすかったからでもある。

 作中における彼は、身寄りの無い戦災孤児の生まれである。
 若年の頃から兵士として生き抜くうちに頭角を現し、
 楚国の将軍である項燕に見出されるまでになるが、
 敵国・秦により項燕将軍もろとも祖国を滅ぼされてしまう。
 そして秦への復讐を胸に秘めながらも遊俠の徒として
 諸国を流浪する歳月を送ることとなり、そんな中で依頼された
 暗殺計画によって劉邦と運命的な出会いを果たすことになるのである。
 
 これはもちろん作者が勝手に作り上げたキャラクター設定であり、
 色々と史実を無視している点は御容赦と御理解の程をお願いしたい。
 (例えば、彼には名のある親族の記録がいくつか残されており、
 戦災孤児どころか名族の出身であった可能性すらあるのだ。)
 
 
 この場で色々と彼に関して語りたいことは多いのだが、
 それは漫画のストーリーを進めることで果たそうと思う。

 読者の方におかれても、「一諾千金」の語源ともなった壮士の
 激動の物語を作者とともに楽しんで頂ければ、この上ない幸いである。